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2008年8月16日 (土)

Paris Cycle Show 1950

Img 英国のサイクリングクラブ「CTC」の会報については以前、こちらでご紹介しました。 今日は3日前の麦草峠越えの身体を癒しつつ(笑)、興味のあった「PARIS SHOW」(1950年11月号に掲載)のレポート記事を読んでみました。 拙い訳出ですがご関心のある方はどうぞ。

Img_0003 PARIS SHOW

典型的なフランス車と英国車との間に明確な差が無くなりつつある、それが今年のパリ・サイクル・ショーを見た私の印象です。
思うに最近、フランス車が他国のアイデアを取捨選択している一方で、英国車はフランス車のアイデアを取り入れ始めています。 例えば、ラグレスフレームはもはや私たちにとって外観上、海外製であることを印象づけるものではなくなっています。 というのも、わが国では似たような溶接方法でフレームを組み立てているビルダーがすでに存在しており、それらのフレームにはたいてい凝った名前がつけられたりしているからです。
今日、ブレーキケーブルがチューブに内臓されていたり、アウターケーブルを取り払って目立たないようにチューブ下部に沿わせている自転車を国内で見ることは稀ではなくなっています。
それらのアイデアは今のところ英国車よりもフランス車で見る機会が多いとはいうものの、もはや特に珍しいものでもなくなっています。
私たちがそういったアイデアを使い始めると同時に、日常用もしくはツーリング用のフランス車がもっているもっとわかりやすい特徴が変化してきているのです。 例えば、すずを延ばした(beaten pewter)ようなアルミニウム合金の泥除けは、1年前はほとんどの車両に装備されていたのに、もはやありふれたものではなくなっていることなどが今回のショーで注目されるべき点でしょう。 いまや泥除けはとても滑らかな表面処理が施されてピカピカに磨き上げられているか、磨き上げられたうえに一部塗装が施されているのが一般的です。
塗装の品質それ自体もいくつかの例を見る限り向上していますし、もはやフランス車はそれに対応した英国車に劣っているとは決して言えないのです。
フランス車がもつ本来のフランス流外観を徐々に退色させているもうひとつの大きな変化は、わが国のクラブモデルに非常に良く似た「デミ・クールス(demi-course)」と「ランドヌール(randonneur)」というモデルの進歩であります。 それらには細いタイヤ(チューブラーの場合もあり)が装着されており、またショーの会場にはその種の車両が非常に多かったため、昨年のショーでは多くのブースで優勢であったツーリング・モデルを見劣りさせています。 むしろツーリング用車両ですら多くの場合、タイヤのスリム化を目指しているように見えます。当たり前のようにハーフ・バルーンまたはフル・バルーンのタイヤを装着した車両は今やほとんど見当たりません。
今日、典型的なフランス車(純粋なレーサーを除く)を特徴づける要素は、ふんだんに使われたクロームメッキ、しっかりした作りの泥除け(幅広で頑丈ながら軽量)、ぐらつかない荷台、ごく普通に使用されている多段ギアと変速機、薄茶色の驚くべき固さのサドルなのです。
フランス製のサドルは一般大衆向けで癖の悪いものですから、BROOKS社のショーブースに何重もの人だかりが出来ているのを見ても私は少しも驚きません。 自転車部品の分野でいくらイギリス製品がフランスのデザイナーから多くを学ばねばならないと言っても、サドル作りはそれとは無関係なのです。
Img_0002 もうひとつ、上級クラスの自転車で人気のあるイギリス製品と言えば、レイノルズ531チューブです。 しかしながら今年の中級車のほとんどに「808」と書いたデカールが貼られていました。それはスウェーデン製のクロームモリブデン鋼であることがわかりました。
通常、メインの3本に808が採用されている場合、フォークやステイは「708スペシャル・スウェーデン鋼」と書かれているのですが、たまに531が708と一緒に使用されているケースもあります。
531と708のコンビネーションのひとつの例として、セント・エチエンヌにある「Cycles Radar」社からニッケル・クロームで塗装されたフレームのロードレーサーが約29ポンド【注】で売られていました。アッセンブルされていたのはストロングライトのチェーンホイールセット、軽合金製のブレーキ、リム、そしてハブ、ステンレス製のスポーク、チューブラータイヤ、10段の変速機(SimplexとCycloまたはHuret)、ブランプトンのチェーンなどです。
これは今日の代表的な上質のファクトリー・ビルド車の値段として順当なところです。 オーダーメイド車のなかでも最高の例がルネ・エルスのブースにある文字通り眩いばかりに完璧にクロームメッキされたツーリング車でした。 それにはトリプルのチェーンホイールと3段のフリーホイール、内部の潤滑を良くする為のグリース注入用ニップルが用いられたシクロの変速機、そしてSKF社製ベアリングが取り付けられていました。 あらゆるケーブル類はフレームチューブの中を通され、ダイナモはサドル下のレバーで起倒されるようになっており、ブレーキはカンチレバー・タイプ、それにふたつの荷台が準備されていました。とても美しい車両で価格は45ポンド【注】でした。
もしこのような車両がわが国の職人によって作られていたとしても、そのコストは(消費税は除いて)それ以上高いものにはならないでしょう。 事実、フランス車と英国車との価格の差は縮まっています。 フランスのコストは高騰傾向にあり、そのことはショーの出展品のごくわずかにしか価格札が出ていなかったことでもわかります。
もうひとつ、興味深い進歩が見られたのは、後輪から前輪へ荷台が移動していたことです。 私がサドルに吊るすサドルバッグを使いはじめて1年以上になりますが、それに後戻りするかどうかは疑問です。 つまるところ、普通のサドルバッグは自転車に装着しない状態で持ち運ぶにはみっともない物なのです(ツーリストは、それを腕に抱えてホテルを出入りしたり、列車に乗降したり、時には他の大勢の人々と一緒に税関手続きに進んだりするのに極めて多くの時間を費やしているものです)。 どうして私達は、もっと手軽に持ち運んだり、荷物の出し入れが便利なバッグを持っていないのでしょう?
私の経験上、前輪に載せたり、前輪の両サイドに振り分けるバッグは、後輪側につける似たようなものに比べてより手近かだし、全ての荷物をわずかであってもバランスよく振り分けるに役立っています。
フランスのサイクリストは、非常に多くの種類、多くの素材、色のバッグを選ぶことが出来ます。パニアバッグではタータンチェック柄が特に人気があるようです。
いいじゃないですか?
もし私達がすばらしい塗装とメッキが施された自転車を所有することになっても、むしろ保守的な黒やカーキ色のバッグを装備するように思われます。

【訳者注】1950年当時、1ポンド=1000円程度だったようです。ただし、日本のサラリーマンの平均月収が1万円前後という時代でもありました。

 

いかがでしたでしょうか。

英国車を上回るフランス車の進歩と台頭、それを恨めしく羨望の目で見つめながらも、BROOKSのサドルとレイノルズの531チューブには頑固までの誇りを持つ英国人記者。英国が本家のはずのサドルバッグに対する冷静な見方は、それを愛用しながらも輪行時の持ち歩きに面倒を感じている僕とまったく同じで共感を得た部分です(笑)

さて、秩父、麦草峠とサイクリングを楽しんだお盆休みでしたが、週末台風が近づいた影響か、天候が不安定です。もうひとつ行っておきたかった信州の峠はまた次の連休あたりでアタックすることにします。

 

 

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