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2009年5月16日 (土)

"patina"ということ

2009_0516_012_2 ピカピカに磨き上げられたアルミ製パーツで固めた"Rene Herse"や"Alex Singer"、はたまた"TOEI"といった自転車をこよなく愛する正統派マニアの対極に位置づけられるのがこの戦前の英国車かもしれません。

2009_0516_009_2 GW前に英国から届いた「The Royal Sunbeam Light Roadster」。 ひと通りのオーバーホール後、シェイクダウンをかねて近場を走った記事を先日書きました。
今日はその細部をご紹介できればと思います。 もっともこんな「屑鉄屋から拾ってきたような自転車」(家人談、笑)の細部に興味を示す方など誰もいらっしゃらないかもしれませんが・・・。
ところがこの自転車を自分のものにして"patina"というものにあらためて開眼したような気がします。 さてその"patina"とは・・・。

2009_0516_026_2 70年以上にわたり堆積した埃や固着した油汚れを丁寧に拭ってやるとこのようにオリジナルの黒塗装が鈍い光を輝かせはじめます。
ヘッド部玉押しを兼ねたヘッドクリップについたオイル注入口が見えるでしょうか。

 

 

 

 

 

2009_0516_019_2 あいにくヘッドマークは消えかかっていますが、「JOHN MARSTON WOLVERHAMPTON」と書かれた金文字がかろうじて判読できます。

 

 

 

2009_0516_028_2 もともとはアップハンドルがオリジナルですが、いわゆるノースロードタイプに付け替えられています。
グリップは「Constrictor」製です。 ヘビの名称を製品名としたペダルやリムなどが有名ですがこのようなアクセサリーも作っていたのですね。 もともとタイヤメーカーですからゴム製品はお手のものなのでしょう。 とても太いグリップで握りやすく疲れません。

 

2009_0516_027_2 ステム部のアップです。 最初見たときは「こりゃ塗りなおさないと・・・」と、黒い塗料とハケを調達したのですが・・・。

上の写真でもハンドルバーの塗装ハゲと錆が見えますが、時間が経つうち「やっぱり、このままの方が絶対に味わい深い」と思えてくるのが不思議です。

 

2009_0516_021_2 ベルは「LUCAS」社の"King of the road"。 真鍮のこの色合い、もう堪りません・・・。 これ以上磨こうなどバチが当たりそうです(笑)

加えてハンドルバーからブレーキレバーに至る錆加減、どうです?
これを"patina"、つまり「侘び」と理解できれば貴兄もきっとホンモノの変態マニアと言えるのかもしれません。

2009_0516_025_2 アバタもえくぼと言いますが、この「Sturmey Archer」の変速レバー"Quadrant"のヤレ具合を見てください!
錆が侵食して凸凹になったレバー表面の具合、これを"patina"と言わずして何を・・・(笑)

 

 

2009_0516_029_2 このペダルのハウジング部もとてもいい味を出していますね。

 

 

 

2009_0516_014_2 この「Sunbeam Roadster」のなかでも特に気に入っているパーツがこれ、「BROOKS」の"B66"です。
逆剥けていない程度にほど良くヒビ割れた表面ももちろんですが、いまだにこれだけの光沢を維持できているサドルは他に無いのではないでしょうか。

新同品の「IDEALE90」等を探し回っているマニアには判っていただけ難い"patina"だと思いますがどうでしょうか。

2009_0516_023_2 「Sunbeam Roadster」の特徴のひとつ、途中で切れちゃっているチェーンステイ。
実はこの先、チェーンケースの中に鋼板が通っているのですね。

 

 

2009_0516_017_2 後輪を外すのが大変面倒なハブ部。

まずチェーンケースの後端カバーを外し、1/8サイズのチェーンを切り(リングを外して接合コマを抜く)、そしてハブナットを緩めます。 で、泥除けを外した上でようやく後輪が外せます。
なお、コマを外したチェーンはそのままにしておくと"OIL BATH"(チェーンケース)のなかにスルスルッと引き摺りこまれてしまい、あとで取り出すのに難儀するため工夫が必要です。

2009_0516_039_2 リムは「DUNLOP」の鉄製です。 サイズは26×13/8。 モデル名でしょうか、"EA3M"との刻印があります。

写真以外の部分はもう半分くらい消えかかっている特徴的なセンター塗装ですが、これもハゲた部分はそのままにしておくほうがヘタに上塗りするよりもいいだろう、と判断しています。

 

2009_0516_031_2 前輪のドラムブレーキ。 「Sturmey Archer」製"BF6"との刻印があります。

タダでさえ重い鉄リムに加えてこのドラムブレーキのおかげでホイールだけでいったい何kgの重さになるのでしょう。 

 

 

2009_0516_024_2 後ろのドラムブレーキは内装3速ギアと一体になった"KB6"。

 

 

 

2009_0516_042_2 「Sturmey Archer」社の歴史と全製品を解説した「The Sturmey Archer Story」によると、上記ドラムブレーキ"BF"と"KB"はそれぞれ1932年、1931年に発売され1938年には姿を消していたようです。
また"KB"の重量は1.5kgだと書かれていました。

 

 

2009_0516_020_2 さて、最後にアクセサリー類をいくつかご紹介します。
ヘッドライトは「LUCAS」社の"CALCIA CADET"。 1939年版「Brown Brothers」カタログにも記載があるとおり、30年代でもまだカーバイドランプは使用されていたようです。
なおこのランプの明るさについては以前の記事で書いたとおりです。

 

2009_0516_015_2 オリジナルの泥除けに付いていたのは当時のアクセサリーメーカー「APEX」社のリフレクターです。
"M109"とのモデル名が刻印されていました。

 

 

 

2009_0516_018_2 インフレーターもリフレクターと同じ「APEX」社製。 英国から送られてきた際に付属していたインフレーターはボロボロで修復不能だったため、手持ちのこのAPEXを装着することにしました。

 

 

2009_0516_033_2 フランク・パターソンも愛用していたという「The Chossy」のサドルバッグです。
いつか「Sunbeam」が手に入ったときのために、と保管していたお気に入りのバッグです。
フエルト製の裏地つきで非常にがっしりした良い作りです。

 

 

2009_0516_043_2 ところで気になるのがいったいこの「Sunbeam」は何年に製造されたものなのか、という点です。

BB裏の厚い油汚れを根気よく拭うと、「O 34**29201」とのシリアル番号が発掘できました(*は判読不能)。
500ページにも及ぶ「Sunbeam」研究書(写真)によると、「Sunbeam」社のシリアル番号には6つのパターンがあり、上記のようにコード("O"は"Royal Light Rordster"を示す)+数字のパターンは1933年から36年の間に製造されたものであるようです。

 

さて、独り善がりな変態的マニア記事に長々とお付き合いいただきました。
"patina"と表現しましたが、錆で茶色く変色した、あるいは黒光りした鉄の状態に愛着がもてるということは、取りも直さず70年以上の時を経てもなおこれだけのコンディションを維持されてきた元オーナーの愛情に共鳴する・・・、きっとそういうことなんだろうなと思います。

これまで約70年。 この先さらに30年経ったとき、僕の愛情に共鳴してくれる人にバトンタッチできれば、と思います。

 

 

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