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2010年3月27日 (土)

Simplex "JUY 543" 1954

2010_0313_021 「Simplex社の開発史上最高の変速機である」と現代の多くのマニアやコレクターが信じて疑わないのがこの"JUY 543"。 発表は1954年の暮れのことでした。

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その評価のなかにはノスタルジーにかられての票も多く含まれていることでしょう。

だって所詮、プルチェーン式のタケノコバネです。

実は1954年の発表直後もこの"JUY 543"のことをそんな風にとらえる人は少なくなかったようです。

 

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左の写真は発表の翌年、1955年6月16日号の英国「Cycling」誌に掲載されたSimplex社の広告ですが、こんなことが書かれています。

『皆さんのご要望に対して供給が追いつかない。せっせと航空便で納入を急ぎ、お待たせ時間を最小限にすべく努力しているので、ご容赦願いたい』
『ところで、"JUY 543"のことを、ただの変速機じゃないかと思っている人たちがいるようだ。それは全くの誤解であり、Simplex社のファンの皆さんにはそのような誤解を解くようぜひ協力をお願いしたい』
『現在の数ある変速機の中で、"JUY 543"だけが備えているポイントは以下のとおりだ。★砂やほこりを防ぐため、すべての可動部分が密閉されており、しかもオイルバスのなかで動くようになっている、★全自動でチェーンテンションを適正に保ち、しかも22Tの歯数差を吸収できる、★ジェットエンジンを搭載した飛行機と従来型のピストンエンジンを搭載した飛行機とがはるかに違うのと同じくらい、"JUY 543"は従来の変速機とはかけ離れたものだ』

とまれ、"Tour de France"といったミッドレンジの製品は売れ続けていたものの、1950年に発表されたイタリアCampagnolo社の"Gran Sport"に対抗できるトップレンジの製品を持っていなかったSimplex社にとって、会心作であったことには間違いないようです。

Img_0002 その後の広告では、世界のトップレースで次々と戦果を収めていく様子が伺えます(写真は、1955年9月7日号のCycling誌掲載広告)。

 

 

 

 

 

 

 

 

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10月5日号の広告では"The Grand Prix des Nations"(グランプリデナシオン)で三連覇を果たしたフランスの英雄、Jacques Anquetil(ジャック・アンクティル)を紹介するとともに、このようなコピーで"JUY 543"の優秀性を宣伝しています。

『"JUY 543"を装備したジャック・アンクティルは、自己記録を塗り替える平均時速40.226kmを打ち立てた。』
『Simplex社の変速機を駆使したアンクティルはこの過酷なレースで三連覇を成し遂げた。』
『しかし今年も彼が記録を更新したことは、わが社にとって何の驚きでもなかった。なぜなら、我々は"JUY 543"が彼にその結果をもたらすであろうことを分かっていたから。』

その後、アンクティルは1957年、61年にこの"JUY 543"を装備したマシン"HELYETT"(エリエ)で、"Tour de France"に優勝します。
しかし、1962年に三度目の優勝を果たしたときの変速機はSimplex社のデルリン製に変わっていたようです。
さらに1963年、64年の通算四度目、五度目の優勝時はフランス"GITANE"製のマシンながら、駆動系はイタリアCampagnolo社の"Record"で纏められていました。

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1961年、"JUY 543"およびその改良型である"JUY Record 60"の後継機として、ようやくCampagnolo"Gran Sport"同様のパラレログラム方式を採用した"JUY Export 61"(左写真)が発表されますが、その後すぐにデルリン製の"Prestige"に取って代わったため、レースでの活躍の場は無かったようです。

 

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さて、1955年当時、Simplex社の社員たちがアンクティルの記録更新を疑いもしなかったというこの"JUY 543"の性能・・・。
早く自分の愛車で試せる日が来ることを祈るばかりですが、まだまだ道のりは遠いのでしょうか?!(笑)

 

 

 

 

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